【新聞:岩手版】果樹栽培に学生が協力

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

【新聞:岩手版】果樹栽培に学生が協力

[2022年12月2週号]

「学生の力に元気づけられることが多い」と藤村さん

 【盛岡】盛岡市手代森の藤村文明さん(71)は、岩手大学の学生と協力し、中山間耕作地の維持管理を目的とした果樹栽培に取り組む。地域の高齢化が進む中で、国の制度を活用し、中山間地農業の新しい形を目指す。

 手代森地区は、傾斜地が多く農産物生産が難しいとされる「特定農山村法指定地域」に指定されている。藤村さんは現在、自身の農地のほか、地域の中山間農用地合わせて約3㌶を管理。「中山間農用地は、地形的に維持管理が難しい。高齢化もあり、担い手の減少が悩みだった」と話す。

 農用地の管理作業は岩手大学の学生と協力して取り組む。参加者への労賃の支払いや食事の提供などにかかる費用は、指定地域で農地を維持管理する場合に支払われる中山間地域等直接支払制度の交付金を利用する。

 作業に参加する学生は20人程度。約2・2㌶の圃場でリンゴや西洋ナシの花摘み、摘果、草刈りなどをする。「未経験者が多いが、栽培技術や知識をすぐに覚える。教える私も気が抜けない」と笑顔の藤村さん。

きっかけは郷土芸能

取り組みがきっかけで卒業後に盛岡市に移住した県外出身の学生がいるという

 取り組みを始めたのは2002年。きっかけは、同地区の郷土芸能「澤目獅子」だ。農業の傍ら「澤目獅子保存会」の会長を務める藤村さん。後継者不足に悩んでいたが、知人の紹介で岩手大学の民俗芸能サークル「ばっけ」と交流を開始した。

 学生と交流する中で「澤目獅子の歴史が伝承されてきた風土を知ってほしい」と、同地区で盛んな果樹栽培の体験を企画。「楽しそうに作業していて、何か恩返しがしたかった」と藤村さん。中山間地域等直接支払制度を利用し、学生に還元することを思いついた。

 藤村さんは「郷土芸能で出来た縁が、農用地の維持活動と制度の活用につながった。若者の成長や地域の活性化になれば」と話す。


ページ上部へ