【新聞:岩手版】漆の生産拡大目指す

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

【新聞:岩手版】漆の生産拡大目指す

[2019年6月2週号]

 【北部】国宝や重要文化財の装飾・修復を行う株式会社小西美術工藝社(本社=東京都港区、デービッド・アトキンソン代表取締役社長)では、良質な漆を自社で確保するため、二戸市で漆の苗木をコンテナ容器で栽培し、耕作放棄地に植樹した。植樹の適地とされる緩傾斜で水はけの良い土地での面積拡大を目指し、耕作放棄地解消との相乗効果が期待される。

植樹の方法を熱心に聞く社員ら

 同社は国産漆の7割を生産する同市の「浄法寺漆」に着目した。同社二戸支社は先日、初の試みとして、同市斗米地区の耕作放棄地30㌃で、社員など10人が201本の漆の苗木を植樹。取締役漆生産部門総責任者の福田達胤(たつたね)さん(35)は「耕作放棄地を活用して重要文化財の修復に使用する漆を栽培し、里地里山の保全と活用につなげていきたい」と話す。

手間省き活着良好

 苗木はコンテナ容器で育て、冬場は無加温のハウス内に移す。「露地栽培の裸苗と比較すると、除草の手間が省け、植栽作業も簡単にできる。細根を傷つけないので活着も良い」とメリットを説明する。

麻マットを敷くことで雑草を防ぐ。マットは土にかえる

 漆を掻(か)くことができるまでには、およそ15年かかるという。「10㌃あたり90~100本が適正密度で、今回は2年、3年ものの苗木や、育成環境の違う苗木など数種類を植樹した。さまざまな条件の苗木を試し、より効率的に漆を育てたい」と話す。

 植樹面積拡大を目指す同社では、漆の生育条件に合った畑を探しているという。福田さんは「耕作放棄地でも、緩やかな平地で水はけの良い畑地であれば植樹に適しています。岩手県内はもちろん、青森、秋田県境でもそのような条件の土地があれば教えていただきたい。お借りした畑は自社で刈り払い作業を行います」と呼び掛けている。


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