【新聞:岩手版】災禍を乗り越え経営継続に注力

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

【新聞:岩手版】災禍を乗り越え経営継続に注力

[2022年4月3週号]

「無人販売機は100円硬貨専用なので100円玉を用意して来てほしい」と話す吉人さん(右)と喜美さん(左)

 【宮古】宮古市刈屋で「とんぶぶ農場」を経営する松田吉人さん(63)と妻の喜美さん(57)は、小麦や野菜を栽培するほか、だんごなどの菓子類を製造・販売する。東日本大震災や2016年の台風10号、新型コロナウイルスの影響を受けながらも、無人販売機の導入などで経営継続に力を注ぐ。

 愛媛県出身の吉人さんは、東京農業大学で畜産を学んだ。1985年に大学の先輩の紹介で、旧新里村和井内地区(現・宮古市和井内)で就農した。吉人さんは「養豚から始まり、牛やヤギなどを飼った。鶏は最大600羽くらい飼っていた」と振り返る。

 ところが、東日本大震災で鶏舎が倒壊した。吉人さんは「鶏は無事だったが、残った鶏舎では飼いきれなかった。物流が止まり、餌の確保や鶏卵の出荷ができず、鶏の数を半数まで減らした」と話す。

 2016年の台風10号では、河川の増水で鶏舎が全壊し、養鶏は廃業を余儀なくされた。「片付けに1年ほどかかった。心身ともに大変だった」と喜美さん。当時は、鶏卵を戸別販売で配達したほか、パンなどに加工して販売していた。

商品開発の面白さ

無人販売機の前には、休憩用の椅子を設置

 現在は刈屋地区で工場を借り、だんごなどの菓子類を製造。材料の小麦粉には、自家産「ナンブコムギ」の全粒粉をブレンドして使用している。

 とんぶぶ農場は、新型コロナウイルスの影響で、産直施設の休業やイベントが休止となり、売り上げが大きく減少したという。新たな販路を模索する中、コロナ対策の給付金を活用し、コイン式無人販売機を導入。21年3月に休憩スペースを併設した「こびり庵」を同地区にオープンした。

 吉人さんは「加工品の製造は、何が売れるのかを考えながら商品開発するので面白い。無人販売機でコロナ禍に対応していきたい」と話す。


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