【新聞:岩手版】震災を乗り越え原木シイタケ栽培

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

【新聞:岩手版】震災を乗り越え原木シイタケ栽培

[2022年3月2週号]

 【胆江】奥州市江刺藤里の小澤敏彦さん(69)は、東日本大震災の福島第一原発事故の放射能の影響で、栽培していたすべての原木シイタケをやむなく処分した。「簡単に諦めたくない」と栽培の継続を決意し、現在は約1万本の原木を露地とハウス1棟で栽培している。

「形の良いシイタケができるとうれしい」と小澤さん

 小澤さんは2008年から原木シイタケを栽培していたが、原発事故で約4千本の原木を処分した。「栽培に慣れ、収穫量が増えてくるところで処分したので、とても残念だった。せっかく始めたシイタケ栽培を簡単に諦めたくなかった」

 現在、自宅敷地内のコナラやミズナラの木を自ら伐採し、ホダ木にする。「シイタケを発生させるため、11月以降はホダ木に毎日散水し、湿度が高い状態を保つように気を付けている」

 日当たりにも注意が必要だという。「日当たりが良くなると、ホダ木に雑菌が繁殖して別種のキノコが生えてきてしまう」と小澤さん。「ハウス内は遮光シートを掛け、露地では周りの木を伐採しすぎないようにしている」

 おが菌を駒型に加工した「形成菌」と、木駒に菌糸を培養させた「駒菌」の2種類の菌を使用する。形成菌は植菌をした年から収穫が見込めるが、駒菌は植菌後にシイタケが発生するまで2年かかるという。駒菌は安価だが、金づちで打ち込まなければならず、形成菌は指で押し込むだけで、扱いやすいという違いがある。

 収穫したシイタケはJAに出荷。「稲作を行わない冬に作業するので、余裕を持って取り組むことができる。原木シイタケ栽培をしている農家は少ないので、今後広まってほしい」と期待を込める。


ページ上部へ