【新聞:岩手版】家族でつなぐ山地酪農

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

【新聞:岩手版】家族でつなぐ山地酪農

[2019年4月3週号]

【宮古】自然に生えている野草を乳牛に与え、1年間放牧して育てる「山地酪農」。田野畑山地酪農牛乳()「志ろがねの牧」の代表をつとめる吉塚公雄(さん(67)は、1977年から山地酪農を続けている。家族で牧場経営から加工品の販売にも取り組み、田野畑村の酪農復活に向けてさらなる経営安定を目指す。

「365日完全放牧をしているため、牛も健康で病気も少ないです」と吉塚さん

 酪農を通して家族が暮らしを共有する姿に魅力を感じた」。千葉県出身の吉塚さんは、小学生の時に知人宅で牛と触れ合い、酪農の道を志した。東京農業大学に進学し、「山地酪農の講演を聞いて衝撃を受けた」という。

 卒業した74年に、広大な放牧地を求め、大学の先輩の出身地である田野畑村に移住し、77年に10㌶の山林の開拓を始めた。

自然本来の生乳

 現在、18㌶の放牧地で乳牛30頭を飼育。穀物飼料は与えず、主食はニホンシバなどの野草で、冬季には乾牧草を与える。放牧地1㌶当たりの放牧頭数を成牛換算で2頭とし、牛が満足して食べられる量と質を確保。化学肥料や農薬は使用しない。

 「ニホンシバは栄養価が高く、牛も好んで食べる。1年間完全放牧なので、牛は健康で病気も少ない。年間の乳量は53㌧ほどだが、自然本来のおいしい生乳ができる」

冬期間も放牧。牛は自由に動き回る

 牛乳の販売は96年から開始した。「牛乳が苦手な人から『山地酪農牛乳はおいしく飲むことができる』と言っていただいた」。

 家族での牧場経営は、現在は長男の公太郎さん(36)を中心に取り組む。ヨーグルトなどの加工品は、2016年に完成した加工場で四男の雄志さん(25)が製造する。

 「牛たちを中心に家族が協力して暮らしています」と吉塚さん。「高齢化により酪農家は減少したが、山林が広がる田野畑村は山地酪農の可能性を秘めている。まだ特異な酪農形態だが、経営を安定させたい」と田野畑村の酪農の再興を目指す。


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