[新聞:岩手版]大迫ブドウの活性化~ブドウの樹を増やす取組み~

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

[新聞:岩手版]大迫ブドウの活性化~ブドウの樹を増やす取組み~

[2016年6月2週号 岩手版]

2016-06-02-21

大迫のぶどうに興味をもってほしいと語る工藤さん

【花巻市】生産者の高齢化や後継者不足により花巻市大迫町の特産品であるブドウの生産量が減少している。その状況を打開しようと、同町の花巻市葡萄が丘農業研究所(藤根勝栄所長)では、樹を残すことへの働きかけを行うなど、「大迫ぶどう」を守るため取り組んでいる。 

「当時は国道沿いにブドウの直売所が並んでいました」と話すのは、花巻市葡萄が丘農業研究所で新規就農者技術指導員をしている工藤英夫さん。昭和40~50年代の同市大迫町では、ブドウの栽培が盛んに行われていて、栽培面積が100㌶以上あったという。

「今は80歳で現役という方が大勢いる」と話すように、現在はブドウ農家の高齢化が進んでおり、後継者不足や生産者の減少もあって、栽培面積は48㌶まで減少している。

その現状を踏まえて同研究所では、農業セミナーやブドウ栽培の新規就農者に向けた技術支援を行っていて、大迫のブドウ栽培を活性化させようとしている。

現在、試験的に考案中なのが、水稲の育苗ハウスを利用したブドウ栽培だ。育苗ハウスの遊休期間にブドウを栽培する技術であり、水稲育苗栽培に影響を与えることもない。また、既存の資材を有効活用できることから多大な設備投資する必要もないのが大きなメリット。この考えは、ブドウ栽培をしていない農家の目をブドウ栽培に向けさせることと、ブドウの樹を増やすことが大きな狙いとなっている。

ブドウの樹を増やすだけでなく、今ある樹を減らさないことも重要だ。工藤さんは「樹は切らないでほしい」とブドウの樹を残すことを推奨している。

2016-06-02-22

「樹が元気なうちはぶどう作りを続けたい」と摘芽作業をする伊藤さん

大迫町でブドウ栽培を50年続けている伊藤ミサオさん(80)は、同研究所の考えに賛同する一人で「長年ぶどう栽培を続けてきたけど私の代で終わるのかなと思っている。でも樹は切らない方がいいのかな」と樹を残す方向で前向きに話している。

今後の展望として、工藤さんは「大迫で生活しながらぶどう栽培をしてくれる担い手を呼びたい」と話し、外部からの新規就農者と地元の農家が協力することで、かつての大迫ぶどうが甦ることを期待している。


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