[新聞:岩手版]肌で感じる診療の現場~獣医療を肌で触れる~総合参加型臨床実習~

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

[新聞:岩手版]肌で感じる診療の現場~獣医療を肌で触れる~総合参加型臨床実習~

[2016年8月1週号 岩手版]

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菊地薫診療所長(写真左)の説明を熱心に聞く学生たち

【奥州市】岩手大学と東京農工大学の共同獣医学科では、獣医師を目指す学生に、野外症例の観察を通し、臨床診断を試みることを目的に「総合参加型臨床実習」を実施。初年度の今年は、6月末から2週間の期間でNOSAI岩手(工藤忠義組合長理事)の家畜診療所で行なわれ、実習生たちは、貴重な実習に取り組んだ。

この実習は獣医師としての基礎を学ぶものであり、小動物診療希望の生徒も必修となる。人が安心してものを食べられる『公衆衛生』と人が安心して家畜を飼える『家畜衛生』の考えに基づいている。

本来20~30ある獣医師課程を米国などでは8年かけて履修する。日本の大学での6年間という限られた履修期間では履修しきれない課程を補う狙いもある。

岩手県内ではNOSAI岩手の3つの診療所で東京農工大学の5年生が実習。大学から、1人1症例は診断させて欲しいと、希望が出されているという。

実習先となった家畜診療所のうち同NOSAI胆江地域センター家畜診療所(菊地薫診療所長)では8人の学生が実習。半日は症例を診て、残りは繁殖検診やレントゲン診断といった実践的要素を体験させた。大館達也獣医師は、「目で見て触れることで違いのわかる症例を観察すると学生の顔つきが変わってきます。学習してきた知識と、実際の体験が結びつく。それが現場で学ぶということ」と話す。

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指導のもと、実際の診療を体験する学生

実習生の1人、東京農工大学農学部共同獣医学科の猪鼻真理さん(23)は「机上の学習とは全然違います。現場での臨床診断も勉強になりましたが、農家さんとコミュニケーションを密に取ることで、その農家さんの希望をくみ取って対応することの大切さを学ぶことができました。」と真剣な表情で話してくれた。

獣医師を目指す学生に期待を寄せる大館獣医師は「診療の現場は個体診療から、その農家が飼育する全ての家畜や農家の背景を考慮に入れ、2頭目3頭目の発病を防ぐ包括的に診療する管理診療が重要になってきているということを感じて欲しかった」と話す。さらに「頼りにされている存在だということを感じて欲しい。頼りにされることでモチベーションも上がるので、より多くの農家ファンを獲得できる獣医師になってほしい」と話した。


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