[新聞:岩手版]受け継がれる郷土食「凍みイモ」

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

[新聞:岩手版]受け継がれる郷土食「凍みイモ」

[2016年2月2週号 岩手版]

2016-02-2_61【田野畑村】冬の寒さを利用した保存食「凍みイモ」作りの作業適期を迎え、作業に励んでいるのは田野畑村明戸の菊地英光さん(57)だ。同村の郷土料理「いもだんす」には凍みイモの粉を使うが、その作り手は少なく、「次代につないでいきたい」と、菊地さんは凍みイモ作りに力を注ぐ。

菊地さんは、父・英雄さん(88)と母・フチさん(82)の3人で、畑5㌃にジャガイモ(品種「メークイン」)を栽培。地元の産直で販売し、サイズが小さいものは凍みイモに加工する。販売用と加工用に分けることで、栽培したジャガイモを無駄にしない。

凍みイモ作りは、寒さが一段と厳しくなる1月(小寒~大寒)に行われる。戸外で凍らせた後、自然解凍したジャガイモをぬるま湯に浸して皮をむき、30~40個をひもに通したものを川の流水に約10日間浸してアクを抜く。雨雪が当たらない場所で1カ月以上乾燥させた後、製粉作業に移る。菊地さんは「川が凍ると水の流れが悪くなり、しっかりアクが抜けない。氷を割って水流をよくするのがポイント」と話す。

凍みイモ用のイモは直径5㌢ほどで、一つずつ手作業で皮をむく。「ぬるま湯に浸すと、ツルッと皮がむける」と菊地さん。メークインは形状的に皮をむきやすく、形も崩れにくいという。「手間はかかるが手作業の方が良品に仕上がる」とも話している。また、収穫後から加工するまでの約5ヵ月間は保管に気を使うとのことで、「腐敗は伝染してしまうので、乾いたかどうかのタイミングが難しい」と話し、十分に乾燥させてから保管している。郷土料理「いもだんす」は、凍みイモの粉と小麦粉を合せて団子状にし、小豆汁に入れて食べる。地元での「イモの粉」の作り手は減少していて、菊地さんが主に産直で販売している。

「凍みイモは冬場の貴重な保存食・収入源になる。郷土食として伝わってきたものを無くしたくない」と菊地さんは力強く話し、今後の生産に意欲を燃やす。

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写真(上)=凍みイモの乾き具合を確認する菊地さん。3月にJALの機内食で使用される予定だ。

写真(下)=凍みイモの粉。道の駅「たのはた」内の産直


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