[新聞:岩手版]地域ぐるみでシカ対策

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

[新聞:岩手版]地域ぐるみでシカ対策

[2016年3月2週号 岩手版]

2016-03-2_51

【遠野市】ニホンジカによる農作物被害が拡大するなか、遠野市では関係機関と農家が一体となりさまざまな対策に取り組んでいる。このほど「平成27年度遠野市ニホンジカ被害対策連絡会」を開催し、本年度の被害対策状況や次年度の取り組みを確認。地域ぐるみでの対策を一層強化する考えだ。

同市のニホンジカ被害は、公共牧場から始まり、現在は市内全域に及んでいる。2012年には国や県、市内の関係機関と被害農家の代表者で構成される「遠野市ニホンジカ被害対策連絡会(大里政純会長)」を設立。捕獲(駆除)などさまざまな活動を行ってきた。しかし、シカの繁殖力は高く、被害対策は困難を極めている。飼料作物や水稲、果樹への被害が大きく、14年度は被害額1億3千万円、獣害全体の97%をニホンジカが占め、地域農業に及ぶ影響は深刻だ。

同市は「捕獲(駆除)・防除・人材育成」を対策の3本柱に、行政と農家が一体となった取り組みを強化している。猟友会を中心に結成した鳥獣被害対策実施隊(76人)と、その活動を補助するニホンジカ捕獲応援隊(125人)が捕獲を行う。応援隊はわなの設置補助や見回りを行い、実施隊の負担を軽減。この連携で捕獲頭数は増えている。そのほかには電気牧柵を積極的に設置。狩猟免許取得の支援や電気牧柵設置の補助、講習会の開催を通じて人材育成にも力を入れている。

本年度は、有害捕獲705頭のうち545頭(77%)がわなによる捕獲で、銃による捕獲実績を初めて上回った。その理由について、遠野猟友会の太田代雅敏会長は「農地周辺部でわな捕獲が増加する一方、隊員の行動が学習され、猟銃による捕獲が難しくなってきている」と話す。また、狩猟期に捕獲したニホンジカのほとんどが受胎していたため、今後も対策を重ねていかなければ増殖が予想される。同市農林畜産部農業振興課・佐々木利幸主査は「徐々に効果は出始めているがまだまだ。今後も行政だけでなく、農家と一体になって、さらには広域的に獣害対策をしていきたい」と話す。

 

写真=わなを設置する実施隊とその補助をする応援隊


ページ上部へ