[新聞:岩手版]復旧農地でジュース用トマトの契約栽培

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

[新聞:岩手版]復旧農地でジュース用トマトの契約栽培

[2016年3月1週号 岩手版]

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【釜石市】復旧した農地を活用して釜石市唐丹町下荒川地区では加工用トマトの契約栽培に取り組んでいる。営農再開を機に始まった新たな栽培品目だが、作業性や収益率も良く、土壌改良を進めながら、栽培面積の拡大を目指す。

同地区は東日本大震災による大津波によって農地約8㌶が冠水した。農地が復旧した2013年に日本デルモンテ株式会社と加工用トマトの契約栽培を開始。1年目は1戸の農家が取り組み、2年目からは6戸の農家が栽培に励んでいる。

「初期投資が少額で、ほかの作物に比べて労力も少なくてすむ。収穫したものを集荷場まで運送屋が運んでくれるのもありがたい」と話すのは、14年から栽培に取り組んでいる鈴木賢一さん(70)だ。

同社は栽培指導のほか、3日に一度、運送業者に委託してトマトを集荷。JAに集荷した後、群馬県の工場でジュースに加工している。

鈴木さんは水稲栽培や繁殖牛を飼養していたが、津波によって住宅や牛舎、農機具の全てを流失した。「多くの方の支援によって農地の整備や農機具もそろえることができました」と感謝の気持ちを忘れずに、新たにトマト栽培に取り組んでいるが、家畜の飼養は断念せざるを得なかったことから経営的な復旧には至っていない。

2016-03-1_53トマト栽培を指導するJAいわて花巻東部地区営農センターの高橋譲営農指導担当は「復旧のために土壌を入れ替えたこともあり、チッ素分が少なく、昨年の収量は県平均の10㌃当たり収量(8㌧)の半分だったが、土壌改良や栽培管理をしっかり行えば、改善できる」と話し「加工用で形状に神経質になる必要はなく、収益率も高いので、栽培面積を増やしていければ」とも話している。

また、大船渡農業改良普及センターの小田島裕主任農業普及員は「生育も良く、果実も多く着いてきているので、病害虫防除と適期収穫を徹底していきたい」と話し、来年度は共同作業や排水管理も指導していきたい考えだ。

復旧農地で新たに始まったトマトの栽培に、地域農業の復興・活性化も含め、地域の期待は大きい。

 

写真(上)=支援に感謝している鈴木さん

写真(下)=収穫したジュース用トマト


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