[新聞:岩手版]農作物被害の食い止めへ~イノシシ対策シンポジウム~

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

[新聞:岩手版]農作物被害の食い止めへ~イノシシ対策シンポジウム~

[2016年9月1週号 岩手版]

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イノシシが泥遊びをしたことにより、まばらになった稲(撮影・戸河内地区)

【平泉町】平泉町第3行政区(菅原悦朗区長)と町議会議員の有志らが主催する「イノシシ、ニホンジカ被害対策シンポジウム」が平泉町の戸河内コミュニティーセンターで開催された。戸河内地区では野生動物による農業被害が相次ぐことから専門家を交えてイノシシの生態を学び対策を協議。情報の共有化を図り、被害の防止へ動き出している。

山間部にある同地区では、昨年の秋からイノシシやニホンジカの目撃件数が急増。今年に入り田植え後の稲の食害や、水田を掘り荒らされる被害が発生しており、懸念が広がっていた。

合同会社東北野生動物保護管理センター(仙台市)の鈴木淳研究員が講師を務め、協賛する町鳥獣被害防止対策協議会などの関係団体や地域住民ら約50人が参加。特に被害が出ているイノシシの生態と対策について学んだ。

説明によると積雪量の減少でイノシシの生息域は県南地域にまで拡大。イノシシは1度に平均4頭出産する繁殖力があり、捕獲だけでは個体数の削減は不可能だという。

対策としては、わなや銃器による捕獲と連動して、イノシシのすみかとなる耕作地周辺のやぶ払いや、餌場となる耕作放棄地の解消。加えて、侵入防止柵を設けて、イノシシを寄り付かせない環境整備の重要性を訴えた。

参加者からのわなの特性に関する質問に対し、鈴木研究員は「箱わなは、大量に捕獲できるが、警戒心が強いイノシシの捕獲は難しい。くくりわなは、設置が容易だが1頭しか捕獲できない」と、わなごとの特性について説明した。

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活発な意見を交わし、問題意識を高めた

理解をより深めようと、東北各地で撮影した野生イノシシの映像も公開された。視界を遮るトタン柵から身を避けようとするイノシシの習性が画面に映しだされると、参加者は侵入防止柵の効果に関心を示していた。

町役場では、イノシシの動向を把握するため、出没に関する情報提供の協力を依頼。菅原区長は「稲の乳熟期に入り厳重な警戒が必要。互いの共通認識のもと、地域ぐるみで対処していきたい」と話す。


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