[2022年8月1週号]
【東南部】釜石市の「まごころ就労支援センター(山本智裕施設長、本部=NPO法人遠野まごころネット)」では、2014年5月にブドウの栽培を始め、現在は9品種200本を約20㌃の園地に植栽する。ブドウは「釜石ワイン」として醸造。ブドウ栽培やワイン造りを通して、利用者の就労と自立の支援につなげている。
同センターは、東日本大震災の被災者や障がいのある人の就労支援を目的に14年に設立。廃業した建設会社の資材置き場だった土地を園地に整備し、ブドウ栽培を始めた。
同センターの職員は「釜石市は漁業者が多く、果樹農家が少ない。この土地でブドウを栽培することは大きな挑戦だった」と話す。利用者約5人と同センターの職員で剪定や薬剤散布、草刈りをし、9月下旬から10月上旬まで収穫する。
職員は北上市の中部農業改良普及センターで栽培の講習を受けるほか、利用者とともに遠野市の果樹農家で栽培方法を学んでいる。
電気牧柵で獣害減少
2年前、シカやクマ、サルによる大規模な果実の食害が発生し、収穫量が大きく減少した。特にサルによる食害が多かったため、高さ3・5㍍の電気牧柵で園地を囲った。しかし、シカやハクビシンの被害も増えたため、さらに外側へ高さ90㌢の電気牧柵を設置し、被害は減少したという。
収穫したブドウは、同法人が運営する醸造所で釜石ワインとして加工、18年から発売している。冷涼な風を受けて育ったブドウで造るワインは、すっきりとした飲み口が好評だ。同市の「道の駅千人峠」や地元スーパーなどで販売し、売れ行きは毎年好調だという。
今年は340本の販売が目標だ。職員は「釜石市で栽培したブドウでワインを造るのは珍しいと声をかけられる。人気が出ると作りがいがあり、とてもうれしい。今後も利用者の就労と自立の支援を続けていきたい」と話す。