[2021年7月2週号]
【東南部】一般社団法人遠野みらい創りカレッジ(樋口邦史代表理事)が横浜国立大学川村出准教授との共同研究で、廃棄されるホップつるから「セルロースナノファイバー(「CNF」)」の分離に成功した。CNFは、自動車などの部材に使われる植物由来の繊維素材。農業廃棄物を活用した農家の所得向上と、SDGs(持続可能な開発目標)達成が期待される。
ホップのつるは5㍍以上に成長する。毬花の収穫を終えると、農業廃棄物として処分されることが多いという。
元遠野みらい創りカレッジマネージャーで、現在は遠野市生涯学習スポーツ課の西村恒亮主任は「廃棄されるホップのつるの利活用を模索していた。2020年8月に行った学生との討論で、CNFの原料に生かしてみようとなった」と振り返る。
CNFは、植物の細胞壁にあるセルロースから作られる超極細繊維で、鉄と比べて軽量で強度が高い素材。植物から作る素材であるため、成長する過程で二酸化炭素を吸収し酸素を放出することから、石油・石炭などの化石資源から作られる素材に比べて、温室効果ガスの削減につながるという。
遠野みらい創りカレッジでは、20年から横浜国立大学のグループとの共同研究を開始。21年にホップのつるからCNFの分離に成功した。
生産者への利益還元に
西村主任は「ホップのつるがCNFの原料として利用できる可能性が高まった。製造コストなどの課題はあるが、廃棄物のホップのつるから環境付加価値の高い物質を生み出すことで、農業の新しい形ができる。SDGs達成に向けた取り組みにもつながる」と話す。
今後は「CNFを使って製品化することが当面の目標。今まで廃棄してきたホップのつるが活用できれば、生産者への利益還元になる。ホップ生産が盛んな遠野市の活性化にもつながると思う」と展望する。