【新聞:岩手版】ワイヤメッシュ立体柵でシカの食害防ぐ

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

【新聞:岩手版】ワイヤメッシュ立体柵でシカの食害防ぐ

[2025年5月3週号]

 【盛岡南】県ではシカによる食害の被害を減少させるため、ワイヤメッシュを用いた立体柵を考案した。この立体柵は、安価で設置が容易なことに加え、下草管理の手間がかからないため、設置後の管理の負担も軽減されることが期待されている。県は現在、十分な効果が得られるかどうか、県内数カ所で検証実験を行っている。

対辺4㍉対角5㍉のスクリューメッシュを使用

図:ワイヤメッシュ立体柵(3枚で1組)※上から見た図  「令和6年度東北地域野生鳥獣対策連絡協議会」資料から引用・改変

 

 

 

 

 

 

 

 

 岩手県が実用化へ検証実験 視覚効果を利用

 ワイヤメッシュ立体柵は1組当たり高さ1㍍、奥行き1㍍、幅2㍍の柵(図)。ワイヤメッシュを結束バンドでつなぎ合わせ、牧草地などの外周に設置して使用する。考案した県農林水産部農業普及技術課技術主幹兼農業革新支援担当・中森忠義課長は「シカなどの野生動物にとって、脚は命の次に大事なもの。ワイヤメッシュ立体柵は、高さに加えて奥行きがあり、置くだけでシカが視覚的に「飛び越えられない」と思わせることで効果を発揮する。『危険を冒してまで飛び越えられない』とシカに思わせることが大切」と話す。

 現在、検証実験を行っている盛岡市玉山地域も、牧草地のシカ被害が深刻化していた。「電気柵の効果を最大限発揮するには、漏電を防ぐために下草管理が必要不可欠。牧草地などの広大な圃場では、電気柵設置後の管理の負担が大きいことが課題だった」と中森課長。

 設置後侵入ゼロ

 同地域の検証実験は2023年11月に1・6㌶の牧草地で盛岡農業改良普及センターが開始。ワイヤメッシュ立体柵設置後にセンサーカメラによる監視も実施した。設置前24日間はシカの侵入が23回確認されたが、設置後の19日間は一度も確認されなかった(表)。24年の一番草と二番草の収量も増加し、効果を実感しているという。

 24年11月には柵の高さを1・2㍍に変更してワイヤメッシュ立体柵を設置した。中森課長は「丈の高い雑草の繁茂により柵が立体であることが認識できなくなると柵が壊されることもある。検証実験を通して実用化につなげたい」と力を込める。

ワイヤメッシュ立体柵を説明する中森課長


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