【新聞:岩手版】害獣を地域資源へ

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

【新聞:岩手版】害獣を地域資源へ

[2024年5月3週号]

 【大槌町】ジビエの加工・販売をする大槌町のMOMIJI株式会社(兼澤幸男代表取締役)は、2023年4月、新工場を稼働させ解体や加工の処理機能を拡大した。24年3月には東北で初の国産ジビエ認証を取得して、近年農作物へ大きな被害を及ぼすニホンジカを資源として活用している。

「国産ジビエ認証」を取得 年間千頭の加工を目指す

「国産ジビエ認証によって販路の拡大にもつなげていきたい」と兼澤代表

 同社は20年5月に設立して、同町で駆除したニホンジカを加工・販売するジビエ事業をしている。

若手ハンターの育成も

 現在は同社が事務局となり、大槌ジビエソーシャルプロジェクトを展開し、若手ハンターの育成などに努める。同町の地域おこし協力隊や近隣農家などと協働し、里ジカ捕獲プロジェクトなどにも取り組む。

 設立当初は1日1頭の解体処理が限度だったが、23年4月にそれまでの工場があった町有地に木造平屋で169平方㍍の加工場を新設。現在は1日に5~6頭を解体処理できるようになった。

 契約しているハンターは同町内の農家など27人。捕獲したシカは血抜きして、氷で冷やしながら一時間以内に工場へ搬入するという。昨年度のニホンジカの解体処理数は約750頭。24年3月は135頭、4月は55頭を処理する。「3月に頭数が多かったので、搬入は朝9時までなど制限を設けた。処理頭数は年間千頭を目標」と兼澤代表。

 24年3月に東北で初の国産ジビエ認証を取得した。これにより商品に認証マークを付けることができる。

 

新しい加工場でニホンジカの解体作業

 同社ではジビエプロセミナーを受講した従業員が、食品の安全性を確保するHACCP(危害分析・重要管理点)の考え方を取り入れて、衛生管理に基づき食肉を加工する。全頭に対して、電解水殺菌、金属探知機検査、放射性物質検査を実施。一頭一頭検食した後は、階級に分けて食用やペットフードなど使途を決める。シカの皮などは、アクセサリーなどに活用している。

 「国産ジビエ認証を取得したことで、消費者や購入者がより安心・安全にジビエを身近に感じることができる。大槌町の1次産業の活性化に役立てたい」と話す。


ページ上部へ