【新聞:岩手版】後代を見据え有機米に注力

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

【新聞:岩手版】後代を見据え有機米に注力

[2023年6月3週号]

「有機栽培の技術を模索中だが、有機栽培はやればできることを農業者に知ってほしい」と話す佳範さん。昌也さんは「付加価値を付けて高く売ったり、設備の導入で省力化できたりすることを知ってもらい、有機栽培が広まればいい」と話す

 【磐井】一関市中里の株式会社一関山本農場は、「一番大切な人に食べさせたい農産物をつくる」を経営理念に、水稲25㌶を栽培する。有機JAS認証を取得した同農場では、農薬・化学肥料・家畜堆肥を使わない有機栽培のほか、MOA自然農法や自然栽培にも取り組む。

 同社代表取締役の山本佳範さん(66)は広島県出身。一関市にある妻の実家の農業を継ぐため、1988年に移住して就農した。農業の経験はなかったが、働きに出ながら義父の作業を手伝い、水稲4㌶の栽培を開始。2001年に経営移譲を受け専業農家となった。

 15年には三男の昌也さん(27)が取締役として就農。今年3月に法人化し、農場として経営を始めた。佳範さんは「息子の後の代を見据えて、就農したい人に経営移譲という形でスムーズに事業継承できるようにしたいと考えた」と話す。

厳格な管理の意識づけ

 有機JAS認証は16年に取得し、現在は「ササニシキ」3㌶、「コシヒカリ」1㌶で有機栽培に取り組む。「専業農家になったころから有機栽培の研究を進めていた。取り組むなら有機JAS認証を取ろうと考えていた」

水田を進むアイガモロボ。電源はソーラーパネルから供給される

 認証には必要な書類が多く、経費負担や現地確認などの手間がかかるという。「現地確認など第三者のチェックが入ることで、厳格に管理しなければと意識づけができる」と佳範さん。

 今年、同農場で自動抑草ロボット「アイガモロボ」を導入した。記録したGPS(衛星利用測位システム)の位置情報を基に水田内を進み、スクリューで巻き上げられた泥が日光を遮断することで、雑草の発生を抑制するという。昌也さんは「有機栽培は除草剤を使えないので、アイガモロボで雑草対策を省力化できれば」と期待を寄せる。

 佳範さんは「有機栽培米でももうからないと持続できない。有機栽培米の利用が拡大してほしい」と力を込める。


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