【新聞:岩手版】駆除活動の促進へ

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

【新聞:岩手版】駆除活動の促進へ

[2025年2月2週号]

 【東南部】遠野市は昨年10月に、有害として捕獲したニホンジカを処理する埋設管を市内5か所に設置。大型排水管を利用した埋設管の設置は県内初となる。市鳥獣被害対策実施隊の負担軽減や新規隊員の確保と駆除活動の促進を目指す。

 遠野市の2023年の鳥獣による農作物被害額は約1億1千万。被害の9割以上がニホンジカの被害だ。23年のニホンジカの捕獲頭数は5763頭。09年の捕獲頭数は237頭と14年で約24倍に増加しており、鳥獣害の対策が急務となっている。

 同市では今回、大型排水管を利用して、鳥獣の減容と埋設処理をする実証に取り組む。予算は同市の一般財源で予算化し、岩手県地域経営推進費も活用する。

ふたを開けて埋設管の中を確認する阿部主任(右)、及川専門員

 埋設管は、コルゲートパイプ2基(内径1.5㍍、長さ3㍍(地中深さ2㍍))と、ポリエチレン管3基(内径1㍍、長さ4㍍(地中深さ3㍍))の計5基。市内の国有林1か所と市有林4か所に設置した。現在、駆除後は焼却施設への搬入や捕獲現場での埋設などで対応している。遠野市産業部農林課阿部竜大主任は「捕獲した個体の処理に困っている隊員の負担軽減と、農作物被害の低減につながれば」と話す。

 筒状の管には対象物を入れ発酵補助剤(同市のたい肥センターのぼかし堆肥を活用)を投入する。「発酵補助剤を入れることで、分解促進と悪臭軽減を期待する」と阿部主任。

 鳥獣による駆除個体の捕食防止のため、鉄板で蓋をして南京錠で施錠。埋設管の底は仕切りが無いため、個体が溶解して土に溶けていく仕組みだ。

 遠野市産業部農林課鳥獣害対策専門員・遠野猟友会副会長兼事務局長の及川光正さん(78)は「今までは解体から処理施設への搬入まで半日を費やすケースもあった。埋設管でハンターの負担軽減にもなり、新しい会員も参加しやすくなれば」と話す。


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