[2024年4月4週号]
東北地域での子実トウモロコシ栽培では、アワノメイガの幼虫の食害による減収や品質低下が課題となっていた。そこで無人航空機で絹糸抽出期頃に殺虫剤「クロラントラニリプロール水和剤」を高濃度少量散布した場合の虫害程度と収量に及ぼす影響を明らかにした。その結果、殺虫剤散布は子実トウモロコシの害虫被害を軽減し、コンバインによる全刈収量を約7%増加させることが明らかとなった。
対策の必要性
東北地域では、水田の有効活用や畑作物の連作障害対策、国産濃厚飼料の増産を図るため、水田転換畑での子実トウモロコシ栽培が広がりつつある。
アワノメイガの幼虫(写真1-1)は子実トウモロコシを食害し、稈の折損や食害粒の発生、雌穂柄の折損(写真1-2)を引き起こす。雌穂柄の折損が甚大化するとコンバイン収穫前に雌穂が脱落してしまい減収となる(写真1-3)。
さらに、食害部はカビが発生しやすくなるため、品質低下の原因となる。面積拡大に伴い、アワノメイガによる減収や品質低下などの問題が顕在化した。
殺虫剤の適用拡大
2023年5月24日に無人航空機による高濃度少量散布に対応した殺虫剤として、適用作物に「飼料用とうもろこし(子実)」が追加され、営農現場でアワノメイガ防除が可能になった(写真2)。
殺虫剤の散布適期の目安は絹糸抽出期頃(トウモロコシの“ひげ”が出るころ)とされ、東北地域では適期散布に努めるため雄穂が抽出する頃に無人航空機で散布する事例が多くみられる。
なお、子実以外も利用するホールクロップやイアコーンなどは「飼料用とうもろこし(子実)」に登録のある殺虫剤は使用できないため注意が必要である
※例=「飼料用とうもろこし(子実)」で登録のある殺虫剤を散布した場合、台風などによる倒伏が発生してもホールクロップ利用はできない
薬剤散布の効果判明
適用拡大前の21年に岩手県盛岡市の農研機構東北農業研究センター内の畑で、子実トウモロコシの絹糸抽出期頃に無人航空機でクロラントラニリプロール水和剤(商品名:プレバソンフロアブル5)を登録された薬量に相当する液量で散布する試験を実施した。
その結果、アワノメイガによる雌穂柄への食害が軽減したことで雌穂柄折損率が低下するとともに、コンバイン収量が約7%増加し、殺虫剤散布による害虫被害の軽減と増収効果が明らかとなった。
今後の展開
適用拡大初年の23年において、東北地域の子実トウモロコシ栽培面積のうち少なくとも半分以上で殺虫剤散布が行われたと推定され、アワノメイガの被害発生地域では防除対策が必須になると考えられる。
※篠遠ら(2024年)から一部改変して引用した。詳細は、出典元の文献を参照のこと(篠遠ら24年、日作紀93:67-68)。本試験は、適用拡大前のデータであり、実際の農薬使用にあたっては、登録内容をラベルや農薬登録情報提供システムで確認し、使用方法を順守すること