[2017年2月4週号 岩手版]
【北上市】高設棚を利用したイチゴのハウス栽培に取り組んでいるのは、北上市黒沢尻で「北上いちご園」を営む片方駿さん(27)だ。「イチゴを通じて地域社会に貢献」を大きな目標に、地域の親子を招待したイチゴ狩り体験を実施するなど日々奮闘している。
花巻のイチゴ農家で研修を積んだ片方さんは、一昨年の9月に同園を設立。昨年2月からイチゴ狩り農園としてスタートした。「紅ほっぺ」「章姫」「かおり野」「おいCベリー」の4品種を、摘み取りやすい高設棚で栽培している。
船乗りの仕事を辞め、4年前に実家の農業を継いだ片方さん。以前から起業に興味があった中で、父の考える「土地を守る」農業を、「土地を有効活用する」農業へと発想を転換させ、農業で生計を立てる決意をした。圃場が稲作に適していないこともあり、他の農業経営を模索。市内にイチゴ狩り農園がなかったこと、イチゴの価格が安定していることなどからイチゴの栽培に目を付けた。
「栽培を始めた当初は失敗の連続でした」と片方さん。慎重に管理していても温度の微妙な変化で実がならないなど、イチゴの施設栽培の難しさを感じた。「周囲の環境に敏感なので管理が難しい。イチゴがおてんば娘とかじゃじゃ馬と呼ばれる意味が分かりました」と苦笑いする。それでも「毎日反省と勉強の繰り返しです。イチゴに関連する本を何度も読み返し、ノートに失敗したことを書き記しています」とイチゴ生産性の向上を図り、試行錯誤を重ねている。
また、今年の1月に社会福祉協議会を通じて「親子すまいるクッキング」と呼ばれるイベントを実施。地域の親子を招待し、イチゴ狩りを通して交流を図った。「高設栽培は子供の背丈でも収穫しやすく、4種類のイチゴの食べ比べができます。ヤギと触れ合うこともできるので、子供たちには楽しい思い出を作ってほしいです」と地域への思いをにじませる。
今後の展望として「多くの人達に鮮度抜群のおいしいイチゴを食べてもらい、『北上のイチゴはここだ!』と思ってもらえるようなイチゴ園を目指します」と意気込みを話してくれた。