[2016年7月3週号 岩手版]
【一戸町】東日本大震災の復興支援事業として、JA新いわて奥中山野菜生産部会レタス専門部(山下達也専門部長=52歳)と岩手日報社などが運営する「スマイルとうほくプロジェクト」のレタスアートが見頃を迎え、収穫したレタスを被災地に届けようと先ごろ地元中学生をはじめとした約80人が収穫作業を行った。同圃場でレタスアートと併せ実施した生育比較試験においても一定の結果が得られている。
今年で4年目を迎えるレタスアートは、25㌃の畑にサニーレタスとグリーンリーフ、マリーゴールドの苗を合わせて2万2千株を5月25日に定植した(6月1週号掲載)。昨年よりも面積を増やし、東日本大震災と熊本地震で被災した人たちに向けて「こころ一つに」とメッセージを入れ、鮮やかなスマイルマークを描いた。山下専門部長は、「今年は、日照不足と低温が原因で生育が遅れたものの、後半はみんなの思いが伝わったのか成長も挽回できたと思う」と話す。収穫したレタスは被災地の釜石に届けられる。
同圃場は、技術実証圃として二戸普及センターの協力の下、有機肥料を活用した品種ごとの生育比較や「生分解性」と「白黒ダブル」の2種類のマルチフィルムを使用した、生育状態と作業効率等を比較している。
有機肥料を活用した結球レタスの生育比較は、早生種の「ラプトル」、晩生種の「シニア」の他、「YLL721」を栽培。生育に大きな差は見られなかったが、葉先が枯れるチップバーンという症状が見られ「有機肥料だけによるカルシウム不足や石灰バランスの不安定などが理由として考えられ、土壌のバランスを整えることが必要だとわかった」と山下専門部長は話す。
2種類のマルチフィルムの比較では、ほぼ生育に違いはなく、「生分解性」のマルチでも十分に栽培が可能であるとわかり、作業効率の改善に期待できる。
山下専門部長は、「このレタスアートを通して、笑顔の輪を広げていけたらうれしい。実証圃での栽培は技術の向上にも繋がり、若い担い手も巻き込み人材育成を図ることや、地元の中学生にとっても農産物を通して将来の職業の幅が広がればと思っている」と話していて今後の活動にも期待が寄せられる。