[2016年12月2週号 岩手版]
【花巻市】果肉まで赤く、ルビー色をしたリンゴ「ジェネバ」。酸味が強く、さっぱりとした味わいが特徴だが、貯蔵性が悪いことから、日の目を浴びない品種だった。花巻市石鳥谷町の佐藤吉紀さんは、ジェネバで花巻のリンゴ生産を盛り上げようと、同品種の生産・原料供給に取り組んでいる。
佐藤さんは、同町八重畑地区で「佐藤農園」を営むリンゴ農家だ。約2㌶の園地では、主にふじやジョナゴールドを栽培しており、希少品種ジェネバの樹は現在5本ある。
ジェネバはカナダで育成された品種で、戦後に日本へ導入された。赤い果肉は酸味と渋みが強く、貯蔵性が悪いこともあって市場に出ることがなかった。
佐藤さんがジェネバに出会ったのは10年前。知り合いの業者からサンプルを譲り受けた時に、その赤い果肉に魅入られた。「果肉の色が魅力的だったので何かに使えないかと思った」と当時を振り返る。
その後、ジェネバの生産を始めたが、収穫しては腐らせての繰り返しで、貯蔵の難しさを感じた。それでも、試行錯誤を経て3年前にジュース加工に至り「少ない原料からでもジュースに加工したらきれいな色になった」と喜んだ。
今年はジェネバを使ったりんご豆乳ドレッシングが完成。農産物の6次産業化を目指す講習会で披露したサンプルは好評を博した。「リンゴドレッシングの原料にジェネバを使ったら、インパクトのあるピンク色になった。思惑通りの色ですね」と自信をのぞかせる。
ジュースとドレッシングは県内の加工会社で製品化され、市内の産直や温泉などに提供している。加工品についてインターネットでの問い合わせがあるという。
「ジェネバの大きな可能性が見えてきた。他県でも赤い果肉のリンゴが話題になっており、これからブームになるかも」と期待を寄せる。
今後は原料の供給が課題と佐藤さん。「ジェネバは、わい化栽培で多くても100㌔収穫できるかどうか。生産が軌道に乗れば穂木や苗木を供給できるようにして、ジェネバの生産を増やしたい」と夢を膨らませる。
「ジェネバを花巻の目玉リンゴにしたい。花巻がリンゴで話題になればいいですね」と熱く話してくれた。