[2022年11月2週号]
【東南部】大槌町のMOMIJI株式会社では、ニホンジカによる農作物被害減少を目的として有害鳥獣駆除に取り組む。駆除したニホンジカを地域資源のジビエ(野生鳥獣肉)として活用するため、2020年に県内唯一のシカ肉加工場を整備し、食肉の販売を開始。狩猟範囲や販路の拡大を目指す。
「町内で米農家を営む父の実家や地元の農家が深刻な獣害に悩まされていることを14年に知った」と話す同社代表取締役兼ハンターの兼澤幸男さん(37)。農作物の獣害は年々増え、同町のニホンジカによる農作物被害額は21年には約782万円に上った。
獣害が続き、廃業する農家が増えている状況を知り、兼澤さんは14年に狩猟免許を取得。最初はベテランの猟師と行動を共にして技術や心得を学んだ。
「狩猟で奪った命はありがたくいただくことを教わったが、野生獣の駆除が目的なので仕留めても廃棄処分するのが心苦しかった」
そこで、駆除したニホンジカをジビエ事業として活用するため、2年半にわたる勉強と行政への交渉を経て、20年5月に同社を設立した。「新しい事業なので行政の理解を得るのが難しかった。子どものころから親しんでいた大槌の自然には、たくさんの資源があることを全国に伝えたかった」
国産ジビエ認証取得へ
22年10月末に新しい工場兼事務所の建設を始めた。工場の床面積は現在の約8倍の169平方㍍を確保し、年間約千頭を処理できる体制を27年度までに整える。来年以降は、適切な衛生管理に取り組む野生鳥獣の食肉処理施設に与えられる国産ジビエ認証の取得を目指す。
兼澤さんは「国産ジビエ認証でMOMIJIの鹿肉が安全であることをアピールできる。捕獲の範囲や販路の拡大につなげたい」と話した。