[2015年10月4週号 岩手版]
【一関市】農家民宿「観楽棲」を営む一関市藤沢町の佐藤静雄さん(71)は、農家直伝のどぶろくを製造販売している。佐藤さんは2㌃作付けする古代米「朝紫」からオリジナル商品「あんちゃんのどぶろく縄文の華」を2012年に開発。作付けから販売まで終始手掛け、田舎の食文化を代表するどぶろくの普及活動に邁進している。
縄文遺跡が残る同町は、古代の風習を忠実に再現した「藤沢野焼祭」で知られている。11年に旧藤沢町がどぶろく特区に認定されたことを受け、佐藤さんはどぶろくの醸造を開始。古代米を原料にしたどぶろくの名称には同町の代名詞「縄文」との結び付きから、縄文の華が選ばれた。
同商品は紫黒色素を持つ黒米に分類される朝紫を玄米のまま仕込むため、薄紅色を帯びポリフェノールが豊富に含まれている。佐藤さんが「赤ワインにも似た酸味と豊かな味わいが癖になる」と評する望みに叶う酒に仕上がった。
古代米以外にも佐藤さんは、10㌃作付けする「ひとめぼれ」のみで仕込んだ、どぶろくも製造する。米と麹と水の配分比が異なる「青ラベル(甘口)」と「赤ラベル(辛口)」を販売し、飲み切りサイズの「ちびろく(300㍉)」も昨年から商品に取り揃えた。
9月に東京都銀座のアンテナショップ「いわて銀河プラザ」で開かれた「一関市藤沢町の物産展」に出品したどぶろく約250本は、会期中に完売。4年前から催しに参加する佐藤さんは「購買層が全国規模に浸透してきた」と振り返り、消費者の反応に手応えを感じている。
本年産の酒米は、10月初旬から収穫作業が本格化している。民宿の敷地に構える工房では年間を通して20回の仕込みを行い、計1200㍑のどぶろくを醸造。商品は民宿や市内小売店で取り扱うほか通信販売で購入できる。
新たな試みとして、本年産から仕込み米用に県の酒造好適米「吟ぎんが」を10㌃作付けした佐藤さん。「この土地でしか造れない酒を世に送り出していきたい」と話し、都市との交流を掲げる山の民宿を拠点に、活動の領域を広げている。(菅原)