【新聞:東北版】農薬不使用、地元で直売 バナナに情熱

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

【新聞:東北版】農薬不使用、地元で直売 バナナに情熱

[2020年11月4週号]

 【岩手支局】岩手県初のバナナ栽培に取り組んでいるのは、北上市相去町の「株式会社ごろすけACファーム(代表取締役=大澤啓造さん、72歳)」。凍結解凍覚醒技術で生産された苗を用い、農薬を使わずにバナナを栽培する。「来年はジュースなどの加工品の販売にも挑戦したい」と意気込む。

「『おいしい』の声がうれしい」と大澤さん

    2017年6月に凍結解凍覚醒法の講演会を受講し、バナナ栽培に興味を持った大澤さん。「その後7月に、岡山県にある農業法人で栽培技術を知り、耐寒性に優れているのであれば岩手でも栽培ができると考えた」と話す。

 凍結解凍覚醒法とは、氷河期の凍結・解凍現象を人工的に再現して植物の種子や細胞塊を育成・培養する方法。「細胞魂をマイナス60度まで冷凍庫で180日かけてゆっくりと冷却する。その後、解凍し細胞が目覚めることで、細胞分裂が活性化し、生育速度が飛躍的に向上し、病害虫や寒さに対する耐性も高まる」と話す。

 大澤さんは、周辺圃場からの薬剤散布の被害の心配が少ないなどの栽培条件に合った同市平沢に、特注の二重被覆ハウス(2・4㌃)を設置。18年9月に、凍結解凍覚醒法を行った苗42本を定植し、翌年10月に初収穫を迎えた。

ハウス内にダクトで送風する

温度管理を徹底

 ハウス内の温度や土の状態に注意を払う大澤さんは、暖房機を使い、冬場でもハウス内の温度を13度以上に設定。夏場は35度以上になると葉などが日に焼けてしまうため、小まめに換気を行っている。

 「安心して食べられるものを栽培したい」と、有機肥料や化成肥料を使わずに、微生物の生息しやすい環境を整える「微生物農法」に取り組んでいる。また、土の状態を見極め、季節によって散水する水の量を調節する。

 栽培する品種は「グロスミシェル」。糖度は20度以上で、ねっとりとした食感が特徴だ。「栽培したバナナは、農薬を使っていないので、皮ごと食べられる。現在、地元の産直や直接販売を行っているが、来年はジュースなどの加工品の販売に挑戦したい」と力強く話した。


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