大震災で田畑流失「農業を諦めない」 決意のブランド化

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

大震災で田畑流失「農業を諦めない」 決意のブランド化

[2018年5月1週号岩手版]

【大槌町】「農業を諦めないという決意のためのブランド化」と話すのは、大槌町大槌で「和ちゃん農園」を経営する阿部和子さん(55)。東日本大震災で被災したが、180坪のビニールハウスでイチゴやミニトマトを栽培し、生果のほか、トマトジュースなどの加工品も販売。大槌町の新ブランドとして注目されている。

 

加工品は県外からも注文

 2005年に就農し、水稲やソバ、果樹や野菜を栽培していた阿部さんは、東日本大震災で田畑が流失した。

 「途方に暮れていたとき、周りの農家の皆さんから野菜などをいただいた。食べ物を自分たちで作れることが農家の強さだと改めて感じた」

 翌年から復興を目指して営農を再開した。さらに、和ちゃん農園を立ち上げ商品をブランド化。農園は今年で4年目となる。

すぐに売り切れ

イチゴは高設栽培を導入。作業効率もアップした

 津波の影響で、土壌に塩分が残っていることも考えられるため、阿部さんは高設栽培システムを導入。品質にも注意を払う。

 大槌町でイチゴを出荷するのは阿部さんが初めて。甘さも好評で、JAいわて花巻「母ちゃんハウスだぁすこ沿岸店」をはじめ、イオン釜石店やマイヤなどのスーパーでは、入荷してすぐに売切れるほど消費者の関心も高い。

 国の「食料生産地域再生のための先端技術展開事業(先端プロ)」をきっかけに13年からはミニトマトの栽培も開始。「ロッソナポリタン」「キャロル10」「サンオレンジ」「オレンジ千果」の4品種を栽培している。

大ビン700円。小ビン280円

味の良さを追求

 16年からは自家産トマトを使い、無添加で作ったジュースも販売。凝縮された深い味を求め、県外からも注文が入る。「私自身、トマトジュースが苦手だった。だからこそ、苦手な人でもおいしく飲めるトマトジュースを作りたかった」

 阿部さんは「お客さんからの『おいしい』という声に背中を押してもらっている。もっとおいしい商品が提供できるように、追求していきたい」と笑顔を見せる。


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