[2015年12月2週号 岩手版]
【一関市】第15回京津畑まつり「食の文化祭」(実行委主催)が先ごろ、一関市大東町の京津畑体育館で開催された。地域の伝統食や家庭料理を試食できる同イベントは、同地区で育まれてきた食文化を地域の魅力として発信。県内外からの注目度も高く、地域活性化につなげている。
京津畑地区は一関市の北端に位置する山間地で、50世帯、人口約130人の集落だ。毎年開催される同イベントは、郷土に伝わる食文化の価値を見つめ直し、ふるさとの「宝」として次世代へつなげようと、集落を挙げて取り組む。
イベント当日は、地域住民100人が腕によりをかけて作った250品もの自慢の手料理がずらりと並んだ。来場者は約千人と大盛況で、試食会では陳列された料理が瞬く間に姿を消した。
一年の風習にまつわる行事食やおやつ、家庭料理などテーマ別に並べられた料理には、作った人やレシピなどの紹介文が添えられた。
行事食では、1月は「鏡餅」、5月は「かしわ餅」など、月の行事にゆかりのある料理を陳列。田畑に水をひく6月は農神様へのお供えものとして、小麦粉やみそなどを合せたものをミョウガの葉にのばして焼いた「葉やき」が紹介された。また、農作業の合間に食べた懐かしのおやつとして、小麦粉や黒砂糖などを混ぜて油で焼いた「油焼き」が並ぶなど、地域で昔から親しまれてきた郷土食も勢ぞろい。
ゼンマイの煮物やウドの梅肉入りフライ、キノコのピクルスなど地元の農産物を活用した家庭料理や創作料理もたくさん並び、会場ではメモを取る人もいて見識を深めていた。
初めて参加した同市の野中智也さん(40)は「たくさんのお茶の間に招かれた気分に浸れて楽しい。鑑賞する以外に味見できるのは画期的」と話した。
実行委員長の伊藤哲郎さん(61)は「思い出が詰まった、心にしみて温もりがある故郷の味を、誇りを持って大切にしていきたい」と話し、地域の食文化を守りながら、交流で集落を活性化していきたい考えだ。