[2016年6月1週号 岩手版]
【紫波町】「キクの栽培は難しい。でも、奥が深くて本当に面白い」と話すのは、スプレーギクを栽培する紫波町南伝法寺の菅原大介さん(40)。高品質なキクの栽培に情熱を注ぎ、周年出荷を目標に、日々研究に励んでいる。
菅原さんは種苗会社が主催した花き栽培の説明会に参加したことをきっかけに2004年に就農。徐々に規模を拡大し、現在はビニールハウス13棟で100種類以上の品種を栽培している。4月中旬から翌年1月上旬まで同町や盛岡市内の産直のほか、関東にも出荷している。
日々の観察を重要視する菅原さん。「過去の経験では、葉がぬれていると2週間で病気が発生する。発生してからではもう遅い」と、わずかな異変を逃さず、病害虫の早期防除や温度・湿度の調整などハウス内が最善な環境になるように心掛ける。そのため、ハウスには暖房や日照時間を調整する蛍光灯や遮光幕、スプリンクラーや灌水チューブなどの設備をそろえ、被覆材には害虫の行動を抑制する紫外線カットビニールを導入することで省力化も図る。
肥料は化成肥料と有機質肥料を混ぜて使用。品種に合わせた最適な配合で二種類の肥料の効果が最大限生きるように工夫している。また、ハウス内に生える雑草も「連作障害を防いでくれる。上手に『生かす』ことが大事」と、除草はキクの生育に影響が出ない程度にとどめる。土壌消毒は行わず、微生物を生かすことで、土壌成分を安定させるなどさまざまな工夫を凝らすことにより、北東北では難しいとされる年3作の栽培を可能にした。
「キクが一番売れるのはお盆。ここでお客さんに選んでもらうためにも、日頃から季節や天候を言い訳に妥協したくない」と需要が少ない時期でも高品質なキクを持続的に出荷する。また、常に消費者ニーズを掴むための情報収集を欠かさず、新品種の栽培にも積極的に挑戦する菅原さんは「流通量が少ない3月の春彼岸に出荷するのが次の目標。いずれは周年出荷したい」と力強く話した。