【新聞:岩手版】ニホンザルを元の生息域に

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

【新聞:岩手版】ニホンザルを元の生息域に

[2021年2月2週号]

首にGPSを装着したニホンザル(写真提供=釜石市)

 【東南部】釜石地区鳥獣対策協議会(舘鼻春雄会長、事務局=釜石市)では、ニホンザルの農業被害対策として、2019年2月からサルの群れの位置を把握できるインターネットサイト「アニマルマップ」を公開している。ニホンザルを元の生息域に戻し、農業被害の減少につなげたい考えだ。

 釜石市では、19年度の鳥獣による農作物の被害額は2278万円に及んだが、ニホンザルは県の絶滅危惧種に指定されているため、被害防止対策に苦慮していた。

 13年にニホンザルに発信機を装着し、行動を調査していたが、位置を知るには受信機とアンテナを持ち歩き、電波を受信する方法だったため狭い範囲の確認しかできなかった。

GPSの電波を受信するために設置された基地局

 16年には「サル去るパトロール隊(隊員4人)」で、生息範囲の見回りや動物駆逐用の花火を使って追い払っていたが、活動がほかの住民たちにまで波及することなく、成果は限定的だったという。

スマホで群れを確認

 19年2月に野生動物の居場所を特定する「動物位置情報システム」を試験的に導入し、群れの中心的な雌の首にGPS(衛星測位システム)の発信機を装着。行動範囲や出没状況などをスマートフォンやパソコンで農家と関係者が確認し、行動の傾向と対策を検討することが可能になった。

 釜石市農林課林業振興係の宮本祥子主査は「このシステムを活用することで、ニホンザルが頻出している場所などに何があるのか確認できる。放置された果樹の木があれば伐採したり、作物を守るために電気柵を設置したり、対応策を考えることができる。追い払いと防除がメインになるが、ニホンザルを元の生息域に戻すことで、農業被害の減少につなげたい」と話した。


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