【新聞:岩手版】レンコン栽培に挑戦

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

【新聞:岩手版】レンコン栽培に挑戦

[2020年3月1週号]

 【中部】「里山の景観を残しつつ、自然や生き物と共存した農業をしたい」と話すのは、花巻市東和町上浮田の「里山耕暮」の佐々木哲哉さん(46)。条件が不利な中山間地でも、可能性がある農業を模索し、農薬を使わない水稲栽培に加え、岩手では珍しいレンコン栽培に挑戦している。

「専用のくわで傷付けないように、1本ずつ手で掘っている」と佐々木さん

 神奈川県出身の佐々木さんは、地方での自給的な生活に憧れて2013年に同市東和町にIターンし、兼業農家として就農した。「誰もやっていないこと、やりたがらないことにチャレンジしたい」と、茨城県などのレンコン農家で栽培管理を見学するなどの経験を経て、17年から本格的に栽培を開始。現在、レンコンは10㌃の水田で栽培している。

 レンコンは、関西圏で栽培されている節間の長い早生品種。5月に代かきした田に種レンコンを植え、収穫時期は10月から4月末ごろまでという。

自然との共存にも配慮

 「収穫期まで水を切らさず、なるべく冷たい水を入れないように、副水路を設けて、日頃から水の管理に気を配っている。里山からにじみ出した水を引き込めるのが中山間地ならではの利点」

 ホタルなどの生き物と共存するため、農薬や化学肥料を使用しない土作りや、生き物の隠れ家を設けることにも配慮している。

佐々木さんのレンコンはホクホクした食感とほのかに甘みのある味が特徴(写真提供=佐々木さん)

 「固い粘土質の湿田なので、茨城のような水堀りはできないが、くわで掘ると、副水路は生き物の逃げ場にもなる」と佐々木さん。「土作りはまだまだ課題がある。微生物による腐植を増やし、適度に柔らかく作業性も良い土壌になるよう改善していきたい」

 佐々木さんが販売するレンコンは、葉が枯れるまで成長させた完熟レンコンだ。収穫からなるべく日がたたないうちに、市内外の飲食店や個人のほか、地域のイベントで販売する。

 「泥の中での収穫作業は重労働だが、『くわ掘りのレンコンはひと味違う』と喜んでもらえることがやりがい。もっと多くの人に食べてもらいたい」と意気込む。


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