[2021年10月2週号]
【東南部】陸前高田市小友町の及川恭平さん(28)は、「地元にワイナリーを建てたい」と地域の耕作放棄地を開墾。2021年5月にリンゴ100本とブドウ800本の苗木を植樹し、ワイナリー「ドメーヌ ミカヅキ」をスタートした。果樹の栽培と並行し、果実酒の製造・販売に向けて取り組んでいる。
同市出身の及川さんは、高校2年生のときに東日本大震災を経験。震災後の状況を目の当たりにし、「復興に携わり、地元に貢献したい」と考えた。
関東の大学に進学し、授業でワインを学ぶ機会があった。「陸前高田の風土や地質がワイン作りに適していることを知り、地元にワイナリーを建てることを決心した」
大学を卒業後、ワインの販売や流通を扱う専門商社に就職した。「就農する前に、ワインの販路を作ろうと思った。生産者の目線も大事だが、消費者や販売の考えも必要」と及川さん。3年間勤務し、サラリーマン時代に築いた繋がりは続いているという。
リンゴ栽培から着手
商社を退職後は、フランスのワイナリーに住み込みで半年間働いた。「海外はワイン造りの歴史が長く、醸造設備を共有できたり、ワイナリー横の道路で瓶詰作業をしているのを間近で見られたりする。日本では見慣れない光景に刺激を受けた」
20年にUターンし、親戚から譲り受けた園地23㌃でリンゴ栽培を始めた。規模拡大を見据え、地域の耕作放棄地を開墾し、「バックホーを運転して、半年かけて整地した」と及川さん。
今年は、リンゴ栽培に加え、耕作放棄地40㌃にブドウの苗木を植えた。「リンゴは加工に向いた『紅玉』、ブドウは陸前高田の気候に合う『アルバリーニョ』を選んだ」
今後について「地元に根付く産業にするために、10年で面積を拡大して規模を広げたい。ワイナリーの経営も安定させたい」と話す。