[2019年6月1週号]
【盛岡】モバイル技術を開発する株式会社MOVIMAS(モビマス、本社=東京都、兒玉則浩代表取締役=34歳)は、八幡平市と提携し、株式会社八幡平スマートファームを設立した。同市が所有し耕作放棄となっていたハウスを再生し、独自の栽培管理システムと地熱を活用したバジル栽培に取り組む。
休耕ハウスを再生
同市は1984年から、松川地熱発電所の熱水を農業用ハウスの暖房に活用してきた。しかし近年では、農業者の減少やビニールハウスの老朽化により、耕作されないハウスが増加していた。
そこで、同市は2017年にMOVIMASと提携し、同社のモバイル技術を活用した最先端の栽培管理システムで、バジルの水耕栽培事業を始めた。兒玉代表は「この事業は、自然の恵みと、すでに確立された設備のある八幡平市だからこそできること」と話す。
肥料は40%削減
バジルの苗木は、高さ約170㌢の縦型栽培装置に定植。養液は、ハウス上部に設置した点滴式灌水チューブを通り、栽培装置の下へ流れる仕組みだ。「かがんで行う作業や重労働が少ないため、作業員の負担軽減が可能」と兒玉代表。「従来の土耕栽培に比べ、水量は約2%、肥料は40%に削減できる」と話す。
温度や養液濃度はハウス内のセンサーで計測し、システムが自動調整をする。現場から離れていても作物の様子がチェックできるように、無線カメラも設置。生育状況や病害虫の発生も、タブレットなどでの遠隔管理が可能になった。
兒玉代表は「昨年は、年間約2㌧出荷の目標に対して、少ない労力で高収量の収穫ができた」と笑顔を見せる。
同社は現在、同市高石野地区のハウスの再建を進め、今夏から新たに12棟が稼働する予定だ。「IOT(Internet of Things:IoT=さまざまな物がインターネットに接続され相互に制御する仕組み)技術は、農業の可能性を広げる。地域振興や雇用創出に貢献していきたい」と兒玉代表は意欲的だ。