[2020年2月1週号]
国産馬の品種改良と受胎率を向上させる研究成果が発表され、技術の普及に期待が寄せられている。昨年11月に東京都で開催された日本ウマ科学会が主催する第32回学術集会で、NOSAI岩手(岩手県農業共済組合、菊地一男組合長)沿岸基幹家畜診療所の庄野春日獣医師ら6人が発表した「輸入凍結精液を用いた子宮深部注入法による定時人工授精」が優秀発表賞を受賞した。
凍結精液を用いた人工授精は、家畜の品種改良を飛躍的に加速させる技術だが、馬は牛に比べて凍結精液の取り扱いが難しい。日本では、人工授精の認められてないサラブレッドの生産に偏っており、人工授精の技術が発展していなかった。また、獣医師の不足により、適期交配が難しい地域では交配の効率化が求められていた。
フランス産の凍結精液が2018年に輸入可能となり、日本馬事協会では国産馬の品種改良と人工授精の受胎率向上を目指している。
北海道の帯広畜産大学で19年2月、馬の人工授精経験者約10人を対象にフランスから講師を招き研修会が開かれた。研修会では、欧米で発展した新しい人工授精方法である子宮深部注入法や輸入凍結精液の取り扱い、薬を組み合わせて授精のタイミングをコントロールする排卵同期化処置を学んだ。
受胎率は6割近くに
同年6月には遠野市「馬の里」で研修会の実践に取り組み、1発情周期当たりの受胎率は6割近くに上った。フランスでの自然交配や新鮮精液などの受胎率に肩を並べる成績となり、実践結果を学術集会で発表。馬事文化と馬に関する研究の推進に役立てるための優秀な発表に贈られる同賞を受賞した。日本馬事協会では今後も技術者の育成、技術の普及に取り組む。
日頃から馬の診療に携わる庄野獣医師は「馬の授精技術者は少ないですが、人工授精の受胎率向上と普及に取り組んでいきたい。そして、この技術でオリンピッククラスの日本産馬術競技馬をつくることが目標」と話した。