[2018年9月3週号岩手版]
【陸前高田市】今年の春に陸前高田市米崎町で就農した太田祐樹さん(41)は、県内初となるイチゴの周年栽培に挑戦している。夏期冷涼で冬期は多照となる沿岸部の気候を生かし、イチゴ栽培による安定した収入の確保と県内有数の産地化を目指す。
新潟県出身で実家の保険代理店で働いていた太田さんは、「新潟大学院在学時に培った果樹の専門知識を生かした仕事に就きたい」と、2014年に岩手県農業研究センターの任期付研究員に応募した。同年から陸前高田市米崎町にある園芸研究施設で、イチゴの周年栽培の研究をしている。
「夏秋」から促成へ
「国内のイチゴ市場は、夏から秋にかけて国産品が品薄となる。店頭に並ぶのはほとんどが輸入品で、この期間に出荷にすることで新たな市場を開拓できる」と太田さん。今年の春から、研究に使用していたハウス2棟(6・6㌃)を借り受け、夏秋イチゴ(7~11月収穫)の栽培を始めた。
夏秋イチゴの後は、促成イチゴ(12~6月収穫)を栽培予定だ。「周年栽培には、夏期冷涼で冬期は日照量が必要。岩手県沿岸部はその条件に適している」と話す。
同じ株で2年収穫
ハウス内は、温度制御設備と電照設備によって株の出蕾を調整しているので、同じ株から2年間継続した収穫が可能だ。2棟の栽培施設の定植時期をずらし交互に収穫することで、同じ品種で3年目以降も安定した収量の確保を見込んでいる。
今後は、陸前高田市米崎町の栽培面積を3㌶に増やし、大船渡市三陸町越喜来地区にある東日本大震災の被災跡地1㌶にもイチゴを栽培する予定だ。また、耕作放棄地の活用も視野に入れる。
「いずれは会社を設立し、この栽培サイクルを普及させたい。岩手県沿岸を新たなイチゴ産地として広めていきたいです」と太田さんは話している。