【新聞:岩手版】快適な環境が生産性向上に

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

【新聞:岩手版】快適な環境が生産性向上に

[2022年8月2週号]

 【中部】花巻市東和町の「自然農園ウレシパモシリ(=酒匂徹代表)」では、1995年から養豚や養鶏のほか、米や麦、野菜など、少量多品目を農薬や肥料を使わずに栽培している。豚は、バークシャー種を約20頭飼育。密飼いのストレスを軽減させ、豚にとって快適な環境で飼育するために通年で放牧している。

「一頭一頭に目を向けて観察するようにしている。前日と比べ、小さな異変に気づくことができる」と合歓さん

 酒匂代表の長男で養豚を担当する合歓さん(22)は、大学で「アニマルウェルフェア(快適性に配慮した家畜の飼養管理)」を知った。「父がもともと豚を放牧していた。アニマルウェルフェアを知り、放牧がストレスの軽減につながっていることを改めて実感した」と合歓さん。

 アニマルウェルフェアに対応した飼養管理で、ストレスやけが、病気を減らすことができ、治療費などのコスト削減や生産性の向上などにつながる。

 合歓さんはさまざまな農場で研修したという。「大規模では一頭一頭に目を向けることができず、機械的な作業になってしまうと思った。販売価格は市場に左右されるため、小規模では経営は厳しいが、『放牧』という付加価値を付ければ経営できると思った」

イノシシ対策に電柵

 放牧飼育は、豚舎で飼育するより運動量が多くなり太りにくい。畜舎飼育では通常は約6カ月間飼育するが、同農園では2~4カ月間多く管理する。

「餌は市内の規格外などの米や麦、大豆を購入し、消化を助けるために炊いて与える。そのほか農園産の牧草、地元産のリンゴも与えている」

6~7カ月齢の放牧豚(写真提供=合歓さん)

 イノシシから感染する豚熱の予防などのため、管理する3カ所の放牧地(20㌃)に電気柵を設置した。豚は土を掘る習性があり土地を荒らしてしまうため、土の状態を見ながら放牧地を変える。

 合歓さんは「現在は肥育だけだが、繁殖から肥育までの一貫経営を目指している」と意気込む。


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