[2023年6月1週号]
【北部】一戸町は、同町の農家が育成したリンドウの新品種「縄文の舞」「御所野ヴェール」を2022年に品種登録を出願し、登録に向けて手続きを進める。新品種の名前は、町内や近隣市町村の住民から公募し決定した。同町では31戸がリンドウを栽培し、昨年の販売額は1億円を突破した。オリジナルブランドを確立し、リンドウ産地としてさらなる拡大を目指す。
同町奥中山の「一戸夢ファーム」で担い手育成部長を務める髙橋寿一さん(72)は、野菜や花きなどの担い手を育成する研修事業の一環として、リンドウの品種改良に取り組んできた。
髙橋さんが育成した縄文の舞は、9月中旬に赤みがかった濃いピンクの花が咲く。14年に圃場で有望株を発見し、挿し木で繁殖させた。越冬芽が確認できたこと、同じ特性が安定して出現したことから、18年に県の種苗センターに依頼して増殖を開始。21年の特性調査で区別性が認められたことから、品種登録を昨年出願した。
播種して繁殖させる品種が多い中、同種は培養苗利用品種だが、挿し木での繁殖も可能だという。「株整理で間引きした枝を挿し穂に再利用するので無駄がない」と髙橋さん。「指導している生徒に栽培方法を身につけてもらい、収益につなげてほしい」と話す。
同町小友でリンドウを栽培する坂戸明夫さん(77)は御所野ヴェールを育成した。白地に水色がかった花が9月上旬に咲き、曲がりが少なく収穫しやすいのが特徴。13年に同町農業指導員だった故玉山清さんが発見した株から採種し、14年に仮植した苗を坂戸さんの圃場へ定植した。縄文の舞と同時期に増殖、特性調査を実施し、品種登録を出願した。坂戸さんは「世界遺産の御所野遺跡にちなんだ名付けで、地域や産地を盛り上げたい」と期待を込める。