[2021年11月2週号]
【宮古・盛岡】近年、海藻類の生育量が減少する「磯焼け」が各地で発生し、海藻類を餌にするウニの生育にも影響を及ぼしている。岩泉町の小本浜漁協(三田地和彦代表理事組合長=74歳)は、ウニの餌料に岩手町産のブランドキャベツ「いわて春みどり」を使用した蓄養試験を開始した。食品ロスの削減と磯焼け対策につながることが期待されている。
三田地組合長は「東日本大震災以降、ウニの個体数は戻ったが、海藻類の生育量は回復していない。餌となる海藻の不足が、ウニの身入りの少なさにつながっている」と話す。
同漁協では、増えすぎたウニを資源として有効活用するため、今年10月からキャベツを使用した蓄養事業を試験的に始めた。
ウニをカゴに入れ、週2回のペースでキャベツを与える。小本浜漁協の大場彬央さんは「初めての試みなので、適切な給餌量などを検討していきたい」と話す。
いわて春みどりを使用
餌料に使用するキャベツを提供するのは、岩手町沼宮内で「いわて春みどり」を約17㌶で栽培する福島昭彦さん。いわて春みどりは、柔らかな食感と甘さが特徴のキャベツだ。
福島さんは、JAから規格外のキャベツをウニのエサに使用する提案を受けたという。「新事業に自分のキャベツを使用してもらい光栄だ。食品ロスも減らすことができる」と福島さん。「いわて春みどりを、沿岸の方に知ってもらうきっかけになればうれしい」と笑顔を見せる。
「正月ごろの出荷を目指し、むき身の歩留まり率で10%以上が目標」と大場さん。2カ月から2カ月半ほど試験し、給餌量や身入り、食味を調査するという。
今後について三田地組合長は「ウニの畜養は試験段階。海産物の餌料として農産物を活用するのは新たな取り組み。水産業と農業、同じ1次産業として協力していきたい」と意気込む。