[2019年11月2週号]
【北部】洋野町種市の株式会社長根商店(長根繁男代表取締役社長=52歳)は、高級キノコ「三陸あわびたけ」を生産し、県内外の外食店や関東方面のホテルを中心に出荷する。2月には同社のキノコ料理を提供する直営店を開店。メニューに使用する野菜などは地元農家と契約し、地域に根差した企業を目指す。
アワビの殻を菌床に
三陸あわびたけは中国の天山山脈に自生する薬用植物「阿魏」に寄生する「阿魏茸」を日本で培養したキノコ。長根社長が2009年に中国から食用の検査を経て持ち帰った。岩手大学や県林業センターなどと試行錯誤を重ね、栽培が成功するまでに10年かかったという。
「三陸あわびたけは植菌から収穫までに5カ月かかる。1つの菌床から1個しか取れない」と長根社長。菌床ブロックの中には、三陸産アワビの殻を粉末にして使う。「天然アミノ酸を多く含んでいて、シイタケやシメジと比べて栄養価が高い。肉厚な食感と抜群のうま味がお客様から好評」と力説する。
直営店「きのこの駅」は同社第一工場の敷地内に開店した。長根社長は「できたてを食べることで、素材の魅力が一番伝わる。多くの方に味わってほしい」と話す。
小規模農家を大切に
「地域に根差した企業でありたい」と栽培工場は地元の廃校を再利用した。また、メニューや同社の加工品に使用する野菜類は地元の農家が契約栽培。「地域の小規模農家を大切にしたい。丁寧に管理し、良質な野菜を栽培してくれる」と感謝する。
長根社長は「高級キノコは引き合いが強い。一般的なキノコの市場を邪魔することなく販売できるので、価格が安定する。それが契約農家への還元にもつながる。この地域とともに、今後も『価値あるキノコ』の生産に励みたい」と力強く話す。