[2021年6月4週号]
【岩手支局】奥州市江刺のブランド米「江刺金札米」が、今年の作付けで100周年を迎えた。江刺地域では、未来につなぐ農業体系を構築するため、循環型農業やSDGs(持続可能な開発目標)に取り組む。JA江刺稲作部会・高橋貞信会長(65)は「未来を見据えた農業を行い、江刺金札米を後世に残していきたい」と意気込む。
江刺金札米は、1921年に生まれた品種「陸羽132号」に由来する。「味の良い江刺米」として、江刺郡農会のマークであった「赤札」を付けて販売し、話題を呼んだ。
しかし、その名声が高まるにつれて、類似する偽札を付ける地方米が続出。その後、岩手県穀物検定所の許可を得て「金札」を付することになり、江刺金札米の名が世に広まったという。
現在の江刺金札米の品種は「ひとめぼれ」で、江刺の生産者によって作られた一等米だけが、江刺金札米を名乗ることができる。
生産者の一人である高橋さんは、今年は1・6㌶に作付けした。「江刺の平野部は水の条件が良い。温暖化が進む中、品質の良い米を作るには水の管理が欠かせない」と話す。
また、同地域では農林水産省が定めたガイドラインに従った特別栽培を実践する。「2004年から江刺地域のほぼ全域で、農薬8成分、化学窒素4㌔以下と、岩手県の慣行栽培基準の半分の数値で栽培している」と話す。
同地域では、未来の農業のあり方について考え、家畜の排せつ物を使用して堆肥を作るなど、循環型農業を推進する。これにより、家畜の排せつ物処理の問題が解決し、同時に環境に配慮した土づくりができるという。「農薬や化学肥料の使用を減らし、品質や環境に配慮した農業ができている」と高橋さん。
20年からは、植物由来原料を30%使用した、バイオマス米袋を導入し、地域を挙げてSDGsに積極的に取り組んでいる。
高橋さんは「100周年を迎えた現在のことだけを考えるのではなく、環境に配慮し、未来を見据えた農業を続けていきたい。そして、江刺金札米を後世に残していきたい」と力を込めた。