[2015年9月3週号 岩手版]
【遠野市】近年の米価下落などによる農家の収入減少が続いている中で、遠野市附馬牛町小出地区では農家6戸が小出地区特産物生産組合(佐々木良一代表)を設立し、山を整備しながら畑ワサビ栽培に取り組み、地域の新たな収入源を目指している。
同組合では、2013年秋に行政の支援を受けながら、地区内の山林に間伐などの整備を施し、そこへ畑ワサビ苗3千本を定植した。
山の整備には、国から環境保全を目的とした森林・山村多面的機能発揮対策交付金の助成があり、1㌶につき16万円と資材費(苗代含む)の半額分が交付される。そのほか、遠野市から事業を起業するグループへの補助金として「アストパワーアップ事業補助金」があり、資材費(苗代含む)の半額分の助成を受けられる。
山の整備から収穫まで約2年かかる畑ワサビだが、助成金によって費用負担が少なく、定植後は除草や肥料散布をすれば栽培管理に手間がかからない。同組合では畑ワサビの収量を上げて夏の新たな収入源にと期待する。
同組合は今年、収穫量2㌧、10㌃当たり70万円の収入を目指し、先ごろ収穫作業を行った。佐々木代表は「思うような収穫にはならなかったが、去年50㌃定植したワサビが順調に生育しており、来年の収穫が楽しみ。今年の秋も50㌃定植するつもり」と意欲満々だ。
水はけが良く、日光がよく入る場所を好む畑ワサビは、定植場所には、山の北面や東面に適し、西日が当たるところは適さない。
畑ワサビの需要は高く、出荷先のカネ弥株式会社(釜石市甲子町)の金﨑公威代表取締役は「畑ワサビは、需要の高いねりワサビに加工されます。現在、140㌧の畑ワサビを扱っていますが500㌧はほしいですね」と話す。
ほかの地区でも栽培面積を拡大する集落もある中、市では、17年の畑ワサビの目標栽培面積を5㌶としており、担当する同市農家支援室・永田裕主査は「17年に市内で『全国わさび生産者大会』を開く予定です。来場者に水ワサビだけでなく、畑ワサビも普及しているところを見ていただきたいです」と話している。(邦和)