[2017年2月3週号 岩手版]
【岩手町】積雪の多い岩手町の特性を生かした冬場の栽培品目として、注目を集めている冬期収穫のニンジン。雪の下から収穫するニンジンは甘くて臭いも少ないと好評だ。同町川口で約150㌃のニンジンを栽培する高村豊さん(28)、成美さん(27)夫妻は現在、収穫のピークを迎えている。
高村さん夫妻は、父・亮一さん(65)、母・律子さん(59)、3人の海外実習生とともにキャベツ180㌃をはじめ、菌床シイタケ、レタスなど多品目の野菜を栽培。同町はナガイモ栽培も盛んだが「(自分の畑の)土質がナガイモ栽培に向かなかったことと、冬場でも長期間栽培できるというのが決め手になった」と、2014年からニンジン栽培を始めた。
収穫作業は11月中旬から2月末にかけてトラクターで行うが、積雪が多い時期はバックホーで除雪をしてから掘り起こす。主に関東のスーパーで販売していて、今年から規格外のニンジンは加工業者に出荷している。
「播種時期が特に重要。ずれると生育不良になる」と話す豊さん。例年7月20日~31日に行われる播種作業は、キャベツの収穫と重なるため多忙を極めるが、分担して効率よく作業を進めることで7月中に完了させる。また、収穫後のニンジンの貯蔵にも細心の注意を払い「温度が高過ぎると腐るし、低過ぎると凍ってしまう」と貯蔵庫内を断熱材と電気ストーブ、さらには照明に保温電球を使用することで、温度が常に5度になるように調整している。10通りの規格に合わせるための丁寧な調整・選別作業も気が抜けない作業のひとつだ。
「寒いだけではニンジンは凍ってしまうけど、雪の下は保温性が高いから凍らずに甘くなる」と積雪の重要性を話す豊さん。雪の下で育った色鮮やかなニンジンは甘味が増し、特有の「臭い」も少ないことから「ニンジンが苦手な方や子どもにも食べてもらいたい」と成美さんも味に自信を持つ。豊さんは「生産者が増えてくれたらうれしい。そのために今自分に出来るのは、より高品質なニンジンを作ること」と産地化に向けて、さらなる質の向上に取り組む。