[2016年2月4週号 岩手版]
【北上市】北上川流域の肥沃な土壌で育った「二子ながいも」の収穫作業が終盤を迎えている。「この時期のナガイモは完熟しているので、みずみずしさの中に深いコクがあり、味がいい」と話す北上市二子町の八重樫嘉道さん(58)は、生産者仲間と共に二子ながいもの味を守り続けている。同市二子地区は特産「二子さといも」が広く知られているが、二子ながいもも同様に作り継がれてきた。現在は生産者が減少し、二子長芋組合(髙橋正美組合長、組合員7人)が中心となり、生産に力を注いでいる。
「二子ながいもは、出荷までに2年かかり非常に手間がいるほか、収穫は冬に行う。生産者が減ったのも作業効率が悪いことが要因」と話す八重樫さん。組合員の一人としてナガイモ生産に励んでいて、現在、ナガイモ10㌃、水稲60㌃、サトイモ50㌃などを栽培している。
高品質なナガイモ作りを追求してきた八重樫さんは、種イモにムカゴ(葉の付根にできる球状の芽)ではなく、切りイモを使用。出荷用に育成したナガイモの中から選んだナガイモを輪切りにし、種として春に植え付け、1年間育成する。次春に一度掘り起し、その中から厳選したナガイモを種イモとして再度植え直し、さらに育成して冬に収穫する。ナガイモは連作障害に非常に弱いことから、収穫後2年は休耕する。転作でほかの作物を栽培した場合でも、その後2年間の休耕を徹底している。ナガイモの収穫期は秋掘りや春掘りが一般的なのに対して、二子ながいもは12月~2月に収穫。土の中で熟成したナガイモは、ほのかな甘みと深いコクがあり、地元産直でも人気が高く、品薄の状態が続いているという。
「質の高いものが収穫できたときは、特にもうれしい」と話す八重樫さん。今後については「これからも作り続ける。何よりも地域の伝統の作物を守り、次の世代に残していきたい」と意欲を燃やす。母・貞子さん(81)は「寒い時期にナガイモを食べれば、風邪をひかないものだよ」と笑顔でPRした。
写真(上)=歳月をかけて育てたナガイモを慎重に収穫する
写真(下)=収穫したナガイモを手に八重樫さん親子