【新聞:岩手版】高品質リンゴを継ぐ

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

【新聞:岩手版】高品質リンゴを継ぐ

[2023年5月3週号]

岩手県立農業大学校で農業を学びながら就農したという史人さん

 【胆江】奥州市江刺伊手の「佐秀りんご園」の副代表を務める佐藤史人さん(35)は、大学院を卒業した後、東京に本社を置く産業用素材メーカーに8年間勤務。父・秀一さんの後継ぎとなるため、兄で同園代表の秀幸さん(37)とともに質の高いリンゴの生産に取り組む。

 就農する前は半導体の製造に関わるエンジニアだった史人さん。「父の後を継ぐ予定だった兄の目が悪くなり、経営を縮小する話が進んでいた」と話す。「幼いころから見てきたリンゴの木がなくなるくらいなら、自分が続けたいと思った」と、2020年に就農した。

 同園では「ふじ」など26種類のリンゴを、市内の標高300㍍の山間にある園地(3・5㌶)で栽培する。山間は昼夜の寒暖差が大きく、リンゴの味や色味が良くなり、蜜の入りと着色が進むという。「標高の高さは質の良いリンゴを栽培する武器になっている」と胸を張る。

 栽培面では「リンゴは剪定が6割」と話す。1月から5月にかけて、日当たりや作業のしやすさなどを考えて剪定する。「枝を増やすと収量は増えるが、日当たりなどは悪くなる。経営と作業効率のバランスを取って剪定することが大切」

 元エンジニアの視点から、農業ならではの難しさを実感したという。「リンゴは1年に一度しか収穫できないので、製造業に比べてPDCAサイクル(※)が1周する期間が長い。改善を要する点があっても、翌年は天候などでうまくいかないことがあるので難しいと思った」

 史人さんは食の安全性がより重要視される時代が来ると考えている。今後はGAP(農業生産工程管理)認証の取得を目指すという。「消費者が安心して農産物を食べられるように、今から準備していきたい」と話す。

※Plan計画、Do実行、Check評価、Action改善


ページ上部へ