[新聞:岩手版]復旧農地で米作り~俺が地域を担う~

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

[新聞:岩手版]復旧農地で米作り~俺が地域を担う~

[2017年3月4週号 岩手版]

「地域の担い手としてできる限りのことをしたい」と小林さん

【山田町】東日本大震災から6年。津波の被害にあった山田町織笠地区では農地復旧や除塩対策作業が進み、昨年までに18㌶全ての水田の復旧が完了した。農業者の高齢化や後継者不足により営農再開が困難を極める中、同地区の小林隆広さん(47)は地域の担い手として農地を積極的に借用し、水稲栽培に励んでいる。

小林さんは、母の英子さん(68)と共に、水稲を主にピーマンやトマト、ホウレンソウなどを栽培する専業農家だ。小林さんは6年前、家業を手伝う傍ら、切り花や資材の販売を手掛けていたが、2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響で津波の被害にあい、店は流されてしまった。家族や自宅、農地は無事だったものの、当時深刻化していた食料不足から「食の大切さ」を改めて痛感した小林さん。「沿岸地域でも米で食べていける農家になりたい」との思いから、所有農地(2㌶)と新規就農資金を活用し、専業農家として農業に従事することを決めた。

農地は復旧したが、高齢化による後継者不足が問題となっている同地区で、小林さんは「地域の担い手としてできる限りのことをしたい」と率先して農地を借用し、栽培面積を約10㌶まで拡大した。

今年度も農作業に向け、準備に余念のない小林さん

面積拡大に伴う労力の省力化を考慮して、2015年から鉄コーティングの直播栽培技術も導入。移植栽培と比べると、収量は約7割に落ち込むが、「新しいことに挑戦しないと状況は改善しない」と意欲的に取り組み、昨年は直播栽培を3㌶まで増やした。

また、面積拡大だけでなく、品質の向上にも力を入れている小林さんは、2016年から色彩選別機を導入。着色米などの不良品を取り除くことで、販売等級を上げ、収入の向上に繋げている。販売先は、JAのほかに北上市の米穀販売業者へ出荷。今後も、販路を拡大していく考えだ。

今後について小林さんは「遊休農地の解消と収量向上を目指して栽培面積を増やしていきます。農地の改良や品種の選定、栽培方法など試行錯誤を重ね、沿岸地域でおいしい米を作っていきたい」と被災農地の回復に意欲的だ。


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