[2023年11月1週号]
【盛岡】採卵養鶏を営む矢巾町上矢次の長沼輝美さん(72)は、鶏に与える飼料や飲料水に炭素を混ぜて電子を付加し、防腐剤や塩素などの薬品の成分を除去する電子技法を利用している。規格外の卵は自動販売機で提供。食品ロスを減らした経営で収益の向上につなげた。
養鶏を始めたのは1971年。当時は卵の生産量を上げるため、薬品を使った改良が盛んだったという。「薬品を使う養鶏に抵抗があった。薬品を使わない食べ物が求められる時代がくると思った」と長沼さん。
雑誌で電子技法を知り、九州地方の農家を視察し、78年に技術を導入。現在は鶏舎5棟で「シェーバー」と「シェーバーブラウン」の2種、約5千羽を育てる。
飼料と水道水は特注のタンクにそれぞれためて、備長炭などの炭素を混ぜ機械で電子を付加し、薬品の成分を除去するという。「電子技法を使って生産した卵は臭みが少なく、日持ちする。コレステロールが非常に少ないのも特徴」
ひなから育て経費節減
養鶏農家の多くは、卵を産むことができる生後150日ほどの成鶏を仕入れるが、長沼さんはひなから育成する。「育てる過程をすべて自分で管理できる。仕入れにかかる経費の削減にもつながると思った」
販売規格に達する卵を産めるようになるには約7カ月かかる。規格外の卵は袋詰めにして自動販売機で提供。収益の向上と食品ロスの削減につなげている。
規格品は、規格ごとにパックに詰めて町内外の産直で販売するほか、北海道や三重県などの消費者から注文を受けている。「『おいしい』という声が励みになる」と長沼さん。「これからも電子技法を使って、消費者が安心して食べられる卵を届けたい」と話す。