【新聞:岩手版】「害獣罠捕獲検知システム」開発

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

【新聞:岩手版】「害獣罠捕獲検知システム」開発

[2023年7月2週号]

「自分の知識と技術を獣害対策に役立てたい」と澤里さん。今年1月に一等無人航空機操縦士の資格を取得した

 【宮古】岩泉町袰綿の澤里寛行さん(46)は、独自に開発した「害獣罠捕獲検知システム」と、ドローン(小型無人機)を獣害対策に利用。ツキノワグマによる農作物や人への被害が多発する同町は、澤里さんの取り組みに期待を寄せる。

 同町内では2022年、有害鳥獣による被害が104㌶で3605万円に上った。住民がツキノワグマに襲われる被害も4件発生している。

 岩泉猟友会員の澤里さんは、プログラマーの経験を生かし、21年に「害獣罠捕獲検知システム」を開発。昨年特許を取得した。

 

害獣罠捕獲検知システムは、単3乾電池8本で2週間以上の連続使用が可能(写真提供=澤里さん)

 システムは、害獣の捕獲を検知し、インターネット回線を経由して遠隔地に情報を発信。設置したカメラからの画像をAI(人口知能)技術で解析し、わなの扉の開閉や害獣の有無を判定する。

 電話回線ではなくIoT(多様なものをインターネットで制御する仕組み)向けの回線を利用するため、電波が弱い場所でも使用可能だ。「遠隔地から判定できるので安全性が高い。山中に設置したわなの見回りや点検作業を効率良く実施できる」と澤里さん。

 昨年、同システムに加えてドローンを使った獣害対策を始めた。上空140㍍から圃場を見回り、害獣の行動パターンを分析。見通しが悪い圃場を安全に巡視できるほか、わなの設置場所の適切な選定につながる。

 「獣害を恐れて作付けをやめた農家がいる。住民の安全確保とともに、農業への悪影響を防ぎたい」

 

ドローンの赤外線カメラで夜間も害獣を追跡できる(写真提供=澤里さん)

 同町は昨年、捕獲事業でツキノワグマを31頭捕獲したほか、電気牧柵の設置費用を補助するなど、対策に取り組む。「澤里さんのシステムの独自性や安全性に注目している」と同町農林水産課の熊谷渓太主事補。町内ではイノシシの被害も発生しており、「イノシシ捕獲のための講習会を開催するなど、対策を進めたい」と話す。


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