[2016年10月3週号 岩手版]
【奥州市】奥州市と平泉町の農家で組織されている「おうしゅうグリーン・ツーリズム推進協議会」では、今年度も農家民泊による教育旅行の受け入れを行っている。
2011年から受け入れを行ってきた同市水沢区佐倉河の佐々木喜久雄さん(70)方では、10月初旬に、大阪府立大手前高等学校の生徒5人が農家の生活を体験した。
2015年度の参加人数は3,944人に上るおうしゅうグリーン・ツーリズム。1988年に同市衣川区(旧衣川村)で神奈川県の学生を農村生活体験として受け入れたのが始まりで、本年度も約3,600人の受け入れを予定している。
佐々木さんは「春は宮城県とか近場の学校、秋は関西の方の学校から受け入れる事が多いですね」と話し、娘を育てた経験から、「うちで受け入れているのはいつも女の子です。慣れているというか、家内も料理とか教えやすいみたいだね」と笑う。
今回の旅程では初日に平泉で若干の観光をした後、各班に分かれて目的の農家宅に宿泊した。佐々木さんは、天候にも恵まれた2日目に自身のリンゴ園地へ一同を案内。収穫時期を迎えた中世種のジョナゴールドを収穫し、選果機にかけ、荷造りまでする過程を体験させた。「田んぼや畑の仕事を体験するのも良いけど、この時期はリンゴの収穫時期だから、取りたてのリンゴを丸かじりするという、自分で収穫しないと体験出来ないことをさせています。それが一番楽しいって子が多いね」と佐々木さん。
口コミを経て市役所の紹介で始めた民泊の受け入れ。滞在中の怪我や病気が一番怖いと、生徒たちの体調には常に気を配りながら限られた時間を共に過ごす。数日の付き合いで情が移り、帰りがけに泣いてしまう子もいるという。同校2年生の外間清花さん(17)は、休憩時間に南部煎餅など地元の銘菓に舌鼓を打ちながら「もう普段の生活に戻られへん。今までうちの学校、修学旅行は違うとこ行っとったけど岩手来て良かったわ」と話した。
在学する学校が大阪のオフィス街に立地していることもあり、農業の、しかもリンゴの収穫作業全般となると全てが初体験。もぎたてのリンゴをほお張りながら生徒たちは「コレが夢だったんよ。ジュースみたいや」とみずみずしいリンゴに感激していた。佐々木さんは「この受け入れをしていて一番うれしいのはああやって大喜びしてくれるときだよ。これからも生徒の受け入れを続けていきたいね」と目を細めた。