[新聞:岩手版]水稲など農薬や肥料に頼らずに~自然との調和を模索~

農業共済新聞岩手版・東北営農技術版

[新聞:岩手版]水稲など農薬や肥料に頼らずに~自然との調和を模索~

[2016年10月2週号 岩手版]

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園主の酒勾さん(中央)と研修生

【花巻市】花巻市東和町土沢にある「自然農園ウレシパモシリ」は、もともとある地形や自然植生・動植物の個性を生かし、無農薬・無肥料の自然栽培で農産物を育てている。園主の酒勾徹さん(48)は「自然環境と調和した永続可能な暮らし」を目指し、自給中心の農園づくりに取り組んでいる。

ウレシパモシリとは、アイヌ語で互いに育みあう大地という意味。「多くの命のつながりが感じられるような農園を創っていきたい」と話す酒勾さんは、水稲70㌃、畑作物230㌃、鶏300羽、豚10頭を妻と子供3人、研修生3人と共に手掛けている。園内には米作りに使うため池があり、田畑の土手にはネムノキが生い茂る広大な農園だ。

長らく耕作放棄されていた土地に、酒勾さんが農園を開設したのは20年前。「家の周りに農地が広がり、ため池や雑木林をひとつながりに利用できるこの土地にひかれた」とこの土地を選んだ理由を語る。

大学生時代は、海外に農業研修視察に行くなど「農業技術者として国際協力の仕事をしたい」という夢を持っていた酒勾さん。「一人前の百姓にならないと協力もなにもない。まずは自分自身が農業をできるように」との思いで就農を決意。大学を休学して農家に1年間住み込みで農業を学んだ。「そのときの農家さんが有機農業をしていたので自然と自分もそれを目指しました」と話す。

水稲は「ひとめぼれ」を中心に、「亀の尾」「陸羽132号」といった自然栽培に適した品種を作付している。「化学物質に過敏な人は、食物に含まれる微量な農薬でも体調不良を起こすため、食べられる食品を探すのが難しい。そういったお客さんの期待に応えたい」と使命感を持って取り組んでいる。

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収穫した陸羽132号、亀の尾ははせがけで天日干しする

現在は東京を中心に自然食品関係の店舗に農産物を卸している。先日は取引先のレストランのお客さんが援農にきてくれたという。「現場を見てもらうことが一番だし、愛情込めて育てたものをお客様においしいと言ってもらえたときが本当にうれしいです」と笑顔で話す。

今後の展望を伺うと「昨年、法人化を念頭にした集落営農組織の立ち上げに関わりました。農業は自分だけではやっていけないので、集落全体で一緒に考えて動いていかないといけない。この農園で、自然栽培を次の世代まで続けていけるようがんばっていきたいです」と話してくれた。


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